紫陽花の季節に

紫陽花の咲く季節にアロンはやってきた。


私はまだ小学4年生。
学校帰りに、家の近くの十字路から不意に現れて、
人懐っこくくっついてきたアロンは、
やせっぽちで、小さくて、歯の生え始めたばかりの仔犬だったね。


ママとパパはおまえたちに世話はできっこないからと、
飼うのを反対したけれど。
私と妹はちゃんと散歩に行くからと一生懸命誓って、
なんとか許しを得たんだよね。


最初の頃は、慣れなくって、家から脱走して学校まで
追いかけてきちゃったこともあった。
まだ授業中だったのに、すぐアロンだってわかって、
職員室の近くになわとびで結わえ付けて待たせておいたときもあったね。


ベーシックな芸じゃつまらないからと、
「お座り」、「伏せ」、「待て」以外にも、
無理なこと、いろいろさせたね。
三輪車に無理やり乗っけてこがせようとしたり、
「1+1は?」と聞いて「わんわん」とほえたところで
無理やり口をつまんで黙らせてみたり。
いやだったよね、ごめん、ごめん。


アロンは穴掘るのが結構好きだったよね。
前の晩から堀り続けてたのかな。朝いってきまーすってドアを開けると、
顔中土だらけにして、すました顔してこっちをよくみてたっけ。
アロンが掘った穴の中には、ママにもらった豚の骨もあったけど、
隣の加藤さん家のサンダルもあったよね。(ないしょ)


ティッシュが好きで、しかも誰かが鼻をかんだ後だと思われるティッシュ
散歩中よく見つけて、咥えてたよね。(汚い習慣だった。。。。)


晴れの日も、雨の日も、春も、夏も、秋も、冬も、
いろんなところに良く一緒に出かけたね。
私は特に、ススキがたくさんになるころの多摩川の土手と、
夏の光と木陰が心地よい市民体育館までの散歩が好きだったな。
でも冬の寒い日は、こたつから出たくなくって、うんちとおしっこだけしたら
すぐおわりにしちゃった。悪いことしたね。


でも、アロンのこと、結構頼りにしてたよ。


陸上の試合前で、毎晩競輪場の周りを20週するときや、
朝のトレーニングのときは、いつも一緒に走った。
優秀な伴走者だった。


スピーチコンテストに近い日や、中国語の暗誦テストの前日は、
歩きながらアロンに覚えたところを聞かせ続けた。
貴重な練習台だった。


つきあってた男の子と、月明かりの下、アロンと三人でお散歩したこともあったし、
アロンの散歩をしながら、長電話してたときもあった。


うれしいことがあったとき、アロンは何も言わないけど、私はアロンに自慢した。
悲しいことがあったとき、アロンは何も言わないけど、いつもそばにいてくれた。


かわいいアロン。15年前の今日は、アロンがうちにやってきた日。アロンの誕生日。
アロン、お誕生日、おめでと。