ツボ押し父さん

母から教えられた病室に入ると、そこには不思議な光景が待っていた。入院しているはずの父が、医者が診察をするように、車椅子の老人と向かい合い、ここはどう?こっちは?などと言いながら老人の足を摩っていたのだ。なんじゃ?と思って近づくとさらに不思議なことに二人は中国語で話してる。


???

近づくと、父は、
「クーニャン(娘です)」と私を老人に紹介し、


「リーラオシ(李さんだよ)」と老人を紹介してくれた。


種明かしはこうだった。隣の病室からやってきた李さんは中国人で、日本語があまりできない。しかしある日、車椅子で院内を回っているうちに明らかに中国人と思しき父の病室を見つけた。しかも中国語も通じた。嬉しくなってちょくちょく病室に遊びに来るようになった。父は父で、長らく気功やツボの勉強をしてた矢先に入院。そんな頃ちょうど病人の李さんがやってくるようになった。しかも毎日暇人である。遊びに来るようになった李さんの足先や足をマッサージしてあげるようになった。私はそんな二人の中に遭遇したのだった。


李さんはにこにこして、六年もあちこちの病院を転々としているけれど、中国人にあったのは初めてだと言った。そして「ウォメンシーインヨウ:我イ門是院友。(病院で出会った仲だから僕らは院友だ)」と自慢げに父と自分を指差していた。


友達ができてよかったね。月曜には退院すると言っていたが、つかの間の出会いになんだか今回の入院の意義の一つを見た気がした。