佃煮海苔

李さんはしばらくして糖尿病の治療で病室に戻っていった。

ふと父の病室のベットに目をやると、そなえつけの机に佃煮海苔の瓶が乗っていた。
「病人がこんな味濃いの食べていいの?」と聞くと、
おかゆがまずいときにはしかたあるまい。」父は涼しい顔をしている。
しかも、高級そうな瓶に入っている佃煮海苔は、高島屋のデパ地下で入手したという。
えっ。病院から高島屋までは歩いて30分近くはかかる距離だよ。
それでも父は、
「暇なんだから散歩くらい構いやしねえよ」と開き直っている。
病院脱出に成功した上、戦利品を得、満足気な父。
やれやれ。多分君は長生きするでしょう。